国民にも医療従事者にも負担増の診療報酬改定

2024/05/29

国民皆保険とは

 日本では、病気やケガをした時の高額な医療費の負担を軽減するため、原則的にすべての国民が公的医療保険に加入する国民皆保険制度をとっています。《ここでいう公的医療保険とは、健康保険組合(組合健保)、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合(共済)、国民健康保険(国保)、後期高齢者医療制度などを指します》
 保険医療機関で保険証を提示すれば、誰でも必要な医療行為(診察、治療、処方など)を受けることができます。当たり前のように思えますが、世界的にはとても画期的な制度です。

公的医療保険のイメージ

診療報酬とは

 診療報酬とは、医療機関が行った診療や検査、治療などの医療行為の対価として公的医療保険から支払われる報酬です。厚生労働省告示により公的医療保険の対象となる診療行為の範囲や点数が定められており、1点の単価は10円として計算します。行った医療行為を積み上げて1点10円で計算した合計額のうち、医療機関は1~3割の自己負担分を患者さんから受け取り、合計額から患者さんの自己負担分を差し引いた残りの額を、公的医療保険から受け取ることになります。
 この診療報酬は2年ごとに改定されます。通常は4月に改定ですが、今回は6月からの実施です。会計コンピューターや電子カルテを改定内容に合わせる作業が医療機関の負担になることから、これらの負担軽減目的で6月からになりました。
 今回の改定で大きく変わる点の一つは生活習慣病管理料Ⅱが新設された事です。今まで高血圧症・糖尿病・脂質異常症などは特定疾患療養管理料が月に2回まで算定可能でした。改定後は、この3疾病が主病名の方については新設された生活習慣病管理料を算定することになりました。この管理料は初回の診察時に「療養計画書」の発行が必要とされ、患者さんの署名が必要になります。2回目以降は患者さんが療養計画書の内容を十分理解した場合は署名を省略出来るようですが、療養の内容が変わらなくても概ね4か月に1回は交付が必要となります。6月以降診察現場で考えられるのは一人一人に署名を頂くため診察の待ち時間が大幅に増えることです。医療関係者の業務を増やしペーパーレスの時代に逆行する内容となっています。対象の患者さんへは療養計画書を発行致しますので、署名にご協力下さい。
 また日常的な感染防止対策、職員の賃上げ実施等を目的に初診料と再診料が僅かに引き上げられますが、物価や光熱費の高騰等、経費増大に見合う内容ではありません。問題の多いマイナ保険証利用や医療のデジタル化が進められ、医療機関の負担が一層増える見込みです。この間、新型コロナ感染症に懸命に対応してきましたが、そのことを評価されたとは思えない内容です。国の狙いは保険給付の削減と患者負担の増額です。医療生協では現行保険証を残す運動を引き続き行っていきます。

逗子診療所事務長 堀越渉