知っておこう骨粗しょう症 人生最後の日まで立って歩けるように【最終回】

2019/01/16

目標になる人を持ちましょう

 骨粗鬆症マネージャーの田縁看護師とお届けしたこのシリーズも、今回で最終回になります。最後は「目標になる人を持ちましょう」です。
逗子診療所に勤務して19年になります。先日統計をとった結果、私の外来患者さんのうち70歳以上の方が76%という結果でした。この仕事の魅力は、お元気でイキイキと過ごしている人生の先輩にたくさんお目にかかれることです。上品でおしゃれな人にお会いすると、「あ〜こんな風に年を重ねていきたいな」と刺激を受けます。
大腿骨骨折を起こした人の中で、骨粗鬆症の人は3分の1に過ぎなかったという報告もあります。私たち医療者は過剰診断をして、不必要な薬を処方することを避けなくてはなりません。そしてみなさんは、何よりも転倒しない体つくりが大切だということが言えるでしょう。
今回は、大変お元気な3名の患者様を、ご紹介させていただきます。

湊 井東様(90歳)
関東学院大学で体育教師をされていました。現在も週2回テニスを続けています。今年の夏も休まずテニスをしていたとのこと。さすがに猛暑の中は心配ですが、本当に素晴らしいですね。

水品 洵様(73歳)
子育てが一段落して、65歳からマラソンを始められました。マラソンを見るのが好きで「いつか自分も走ってみよう」と思っていたそうです。今は若者と一緒に7〜10キロ走っています。9月には皇居マラソンにデビュー。2周走ったそうです。

竹市 義弘様(99歳)
90歳の時に、背中が曲がらないようにと自宅の廊下に手作りのぶら下がり棒を設置しました。毎年海外旅行に行かれています。看護職員の骨粗鬆症についての勉強会にスペシャルゲストでお呼びしました。その時、私は座って講義をしましたが、竹市さんは直立不動でご自身の治療歴をお話して下さいました。脱帽です。

 逗子には紹介した人たちに負けないお元気な高齢者がたくさんいます。そしてさらに胸を打つのは病気を患いながらも頑張っている方たちです。
パーキンソン病で体が硬くなり、スムーズに動かせなくなっても、子供たちに迷惑をかけないようにと毎日リハビリを続けている人、心筋梗塞になっても年末の「第九」に向けて、ウォーキングや発声練習を欠かさない人、目の難病を患いながら「見えるうちは」と、鮮やかな色の花を植えてガーデニングを楽しんでいる人、夫婦2人8脚(2人とも両手に杖で歩行です)で日本中を旅している人、例をあげれば限りがありません。きっとみなさんの周りにも同じような人たちがいると思います。
年齢を重ねれば必ずほころびが出てきます。同じ境遇にある人、自分よりも年を重ねても前向きに輝いて生きている人を目標に体づくりをすると励みになると思います。
たとえ骨粗しょう症になっても、シリーズで紹介したような治療薬を使い、筋肉を落とさないように運動すれば人生最期の日まで歩くことも夢ではありません。外出できなくても、冷蔵庫まで歩いて行って冷たいビールを取って来る、トイレまで行って排泄をする、ことが私の目標です。「死ぬこと以外はかすり傷」とつぶやきながら私も腕立て伏せをしています。みなさまもぜひ頑張ってください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

逗子診療所 医師 倉井由加
(日本骨粗鬆症学会認定医)